村上隆、INDEPENDENT、X-Largeによる 伝説のコラボレーション「HIROPON」

HIROPON

六本木ヒルズのキャラクター制作やルイ・ヴィトンとのコラボレーションで、多くの人々の注目を集める村上隆。日本の伝統文化やオタク文化を参照し、様々なジャンルをつなげていく彼は、今や世界に愛されるポップ・アーティストと言って過言ではない。そんな彼が初めて行った本格的コラボレーションが、1998年CITIZEN/INDEPENDENTシリーズとしてリリースされたアート・ウォッチ「HIROPON」だ。

HIROPON村上自身がデザインしたこの腕時計は、ステンレスと赤いスケルトンを使ったベルトや赤い本体に、オリジナルキャラ「Mr. DOB」の目玉や顔のモティーフを大胆にあしらったインパクトある風貌。円盤の秒針にも目がプリントされ、さらに裏盤には、特別に描き下ろされたDOB君のドローイングが刻印されて豪華極まりない。時計を入れるパッケージも、ツルっとした質感が村上らしい、彫刻さながらの仕上がりである。999本限定のこの時計は、早々にソールドアウト。ライフスタイルとアートを新たに接合した殿堂入りの逸品として、今も鮮明に記憶されている。

HIROPONさて、この時計にはユニークなアートの逸話がある。ファッション・ブランド、X-Large(エクストラ・ラージ)の創設者が村上ファンだったことが縁で日米のX-Largeショップに置かれることになった「HIROPON」だが、初めて披露された場所は、X-LargeがLAに構えていたアート・ギャラリー、George'sだった。その時に開催されていたのが、村上隆キュレーションによる若手アーティスト展「HIROPON SHOW」。これは村上が推す若手やボーメ、町野変丸ら、日本のオタク・アートの系譜を強烈にアメリカに印象づけた、後にスーパーフラット展へと連なる記念すべき企画だ。当時UCLAに短期の客員教員として招聘されていた村上が、同じく招かれた奈良美智と同じアパート住まいをしていたという有名なエピソードもこの時期のこと。すなわち、村上隆、INDEPENDENT、X-Largeのトリプル・ネームが揃った「HIROPON」は、カリスマがカリスマになる前夜のパワーが濃密に刻印された、伝説の品であることは間違いない。